2020年12月31日1時03分

日銀が外為特会から60億ドル買い入れ 日銀と財務省のニーズ合致

日本銀行は16日、財務省の外国為替資金特別会計から60億ドル程度を買い入れると発表した。市場介入の決定権を持つ財務省の指示を受け、「円売り・ドル買い」の市場介入を行う格好で、購入したドルを外国為替市場に介入する際の資金源に充てる見込み。日銀によれば、初の外為特会からの売り戻し条件を付けない買い入れとなるという。

外為特会は、政府が外貨取引する際に使われる特別会計の1つ。日銀には年度末に向けて外貨を積み増しておきたいニーズがある一方、財務省には補正予算の財源の手当てや外貨準備資産として金の保有を積み増したいニーズがあったことで、双方の思惑が一致。今回のドル買い入れに至ったという。

今回のドル資金買い入れ要綱によると、日銀が財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)から60億ドル程度の米ドルを買い入れる。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、国際金融協力や金融機関への外貨資金供給の円滑な実施に備える目的で、2021年3月末までのいずれかの営業日に、通貨の対外価値を示す市場の実勢レートで購入する予定だ。

現状、金融機関の米ドル資金繰りには問題がないものの、新型コロナの感染拡大で不透明感が強い状況が続く。そのため、日銀として米ドル資金を余裕のある状態で、保有しておくことにした。今回の米ドル資金の買い入れは、コロナ対応で拡充した米連邦準備制度理事会(FRB)とのスワップ取り決めを通じた流動性供給とは異なる枠組みという。

日銀のドル買い入れを受け、市場からは、さまざまな憶測が飛び交う。

JPモルガン証券のチーフエコノミストの鵜飼博史氏は、「財務省内部でも理財局保有の地金を円に替えて補正予算の財源の一部に充てたいという思惑と、国際局が管理する外為特会で金資産をある程度持っておきたいというニーズがあったようだ」と指摘する。

他方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「FRBが万一ドル供給を停止した場合に備え、自前でドルを供給できるようにするのが目的にある」と指摘。また、財務省の外貨準備に含み益があり、「市場で売却するとドル売り円買い介入と同じ効果を持つため、それを避けるため日銀にドルを売却し、得られた円資金を何らかの予算に使うこともあり得る」との見方も示した。

財務省幹部は16日、日銀による外為特会からのドル買い入れについて「コロナ禍における極めて例外的な対応」との認識を示している。


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